Aaki Hikaru

読書・自然 / 写真・語学・ドラマについて

【本】川上 弘美「センセイの鞄 」温かくて切ない 歳の差恋愛

川上弘美さんの「センセイの鞄」(谷崎潤一郎賞受賞)作を読んだ感想を書きました。

この作品大好きなんです!!

ネタバレになる可能性がありますのでご注意ください。

作品

タイトル : センセイの鞄

著  者 : 川上 弘美

発  行 : 新潮文庫

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あらすじ

ツキコが高校時代の国語教師”センセイ”と居酒屋で再会する。年齢の離れた2人が、想い合い、彩のある時を共に過ごす話。

感想

2人の再会から始まり、センセイとの静かな日々が丁寧にゆっくりと描かれていています。居酒屋で2人が並んで、食と酒を楽しんでいる情景が浮かびます。

けれど読んでいる最中、なぜか・・少しの不安が、ずっと付き纏っていました。

ツキコとは共通点が多く、自分を重ねて読んでいるからなのか、それともセンセイが見せる”普通のイケてる男”感が原因なのだろうか・・・

70代のセンセイと30代後半のツキコは、時に歳の差を感じさせませんでした。

センセイには、ツキコをからかったり、喧嘩して頑固になったりと、お茶目な一面があります。

私も歳の離れた男性とお付き合いした経験あるのですが、当時は「自分よりも人生経験があるくせに、大人げないな〜折れてよ」なんて思っていました。

今になってわかる事ですが、自分も相手に対する”好きを伝える表現”愛する人への自分の表現方法”は、歳を重ねた今も変わっていないと、恥ずかしながら感じています。

相手を理解する能力に関しては、多少時間をかけて経験を積む必要があるかもしれません。

個人的な意見ではありますが、相手を想う気持ちや表現に、年齢は関係ないと思いました。

この不安の正体は、大切な人がいつ離れていくかわからないことを、この作品を通して、改めて感じたからなのかもしれません。今のこの瞬間も大切な人との時間を大事にしようと思いました。

 

 

センセイという魔法の言葉

過去に私が言ってきた「先生」に続く言葉は決まって「わかりません」でした!笑

先生方は、私のどんなくだらない「わかりません」に対してもちゃんと答えをくれてました・・なんだか「先生」って言葉、安心感に包まれます。

「センセイ、と呟いた。センセイ、帰り道がわかりません。」P 98

ツキコのこの一言が本当に本当に本当に胸に刺さりました。

「センセイ」と呼んだ意には、指導者的立場 教師としての意味も含んでいたんじゃないかと思います。

私は今何してるんだろう〜私のこれまでの選択は正しかったのだろうか・・・

先生〜教えてください (/ _ ; )

 

袖すり合うも多生の縁

ラストはこの言葉が頭によぎりました。

センセイがツキコに言う言葉なんですが、私この言葉大好きなんですよね。

私は「袖振り合うも多生の縁」しか知らなかったのですが、調べてみると言い方が何通りかあるそうです。

来世も、センセイとツキコの縁が結ばれますように。

 

 

【本】京極 夏彦「虚談」虚と真が揺らぐホラー小説

ご訪問いただきありがとうございます。ひかるです。

今回は京極夏彦先生の「虚談」(談シリーズ)の感想・紹介です。

ホラーが大好きな私のおすすめ作品です!

※ネタバレになる恐れがありますのでご注意ください。

作品

タイトル: 虚談 (きょだん)

著  者: 京極 夏彦

発  行: 角川文庫

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あらすじ

元デザイナーで小説家の「僕」は、知人友人からよく相談を受ける。「ナッちゃんはそういうの駄目な口やろ」と笑いながら、デザイン学校時代の齢上の同輩、御木さんは奇妙な話を始めた。13歳のとき山崩れで死んだ妹が、齢老い、中学の制服を着て、仕事先と自宅に現れたというのだ。だが、彼の話は、僕の記憶と食い違っていた。(「クラス」)。

この現実と価値観を揺るがす連作集。

引用元 裏表紙より

感想

初めて「虚談」というタイトルを見た時は、単純に”嘘話し”と読み取りました。

印象的だったのは、ほとんどの話の中でどこかしらに ”嘘” という言葉が書かれていたことです。

嘘だとわかっているのに、妙に不安な気持ちになり、体温がじわじわと下がる感覚。

どこまでが真実なのか、この嘘は本当に嘘なのかと疑うことをやめられない物語展開。

淡々と語られる話は、真と虚が奇妙に混ざり合い、ある矛盾から起因する不安が、身近で現実的な恐怖へと変化する。

この”嘘”という前置きが故に不気味で、いつまでも不安を拭えないんです( ;  ; )

個人的に、目次に沿って最後まで読むことをお勧めします。

自分の記憶

記憶ってとても不確実なものだと思います。

私は幼少期の記憶の中に、家族で遊園地に行った時の映像が鮮明にあります。

だけど親に確認したところ、どうやらそんな事実はなかったようです。こわいですよね。

この作品はそんな身近な恐怖を感じさせてくれました。

 

体験してない過去だの、存在しない友人だの。

そういう虚構がふと現実になって混じってくることは、あるだろう。

引用(クラス)P143

 

自分の作り出した"虚"も、今を生きている自分のすぐそばにあるものであり、ある種の現実なのかもしれません。

 

僕は、見聞きしたから真実だと言い張る自信がない。記憶しているあらゆるものごとが真実だと断言することも出来ない。自分が知っている自分のことも、必ずしも本当とは思えない。嘘かもしれない。

もしかしたら。

今、見聞きしているこの現実らしきものこそーーー。

嘘なのかもしれないのだし。    

引用(クラス)P143

小話(夢)

これは昼寝の時に、頻繁に見る夢の話です。

一人暮らしの私の休日は、いつもダラダラと昼寝三昧。

どんな夢かというと、起きようともがくけれど、起き上がれないという夢。

体が鉛のように重くて、何度体を起こそうとしても、何かに押さえつけられているかのように動けない。寝返りもうてない。声も出ない。

その夢は、現実で起きられない自分と葛藤している姿なのか、それとも夢の中で行われている葛藤なのかはわからない。けれど、その体や思考の感覚はあまりにリアルだ。

よく脳が疲れると、このような状態になるとどこからか聞いた事がある。

そう考えると、現実寄りの出来事なのかもしれない。

目に映る部屋の景色は、今自分が寝ているベッドに違いないのだから。

そんな夢は存在しないのであろう。

この夢は20歳を過ぎた頃からこれまでに何度も見てきたが、未だに夢なのか現実なのかどちらなのかはっきりとは自分でもわからない。

だけど現実であれば、納得いかない点が1つある。

 

 

じゃあ、側でいつも自分を見下ろしているあの男は誰なんでしょうか。

 

【本】恒川 光太郎「夜市」幻想的で哀愁漂うホラー小説

こんにちは、ひかるです。

今日はこの季節に合った小説、恒川光太郎さんの「夜市」(日本ホラー小説大賞受賞作)を読んだ感想を書いていきます。

「夜市」と「風の古道」の2篇が収録されていて、個人的には「風の古道」のほうが好きです。

小さい頃って、人気のない小道や獣道を探しては入ってみたりしませんでしたか?

子供の頃ってそういうところに自然と引きつけられるんでしょうか・・・

「夜市」は2作ともに幻想的な世界に引き込まれ、どこか懐かしさを感じさせます。

作品を読んで思い出した、私のくだらない小話も書いてます。よろしくお願いします!

あらすじ

夜市

主人公の裕司は小学生の頃に弟と二人で不思議な市場「夜市」に迷い込んでしまう。

そこでは妖怪たちが様々な品物を売っており、裕司は"あるもの"と引き換えに「野球の才能」を買った。

大きくなった裕司は、"あるもの"を買い戻すために、再び「夜市」を訪れるが・・・

風の古道

人間には見えない、世界中へと繋がっている道。道を通るのは人の世の者ではなくて・・

そこへ迷い込んだ主人公と友人は、ある男と出会い短い旅をする。道を進むそれぞれの目的と出会い、全てが繋がった時、衝撃の真実を突きつけられる。

感想

文章が頭に入りやすく読みやすいのに、奥深さを感じる。

幼い頃って善悪の判断は出来ても表面だけで、裏までは見えないだろうし、その判断の先に何があるかなんてわからないと思います。

ましてや異界にいるなんて、わからないと思うんです!いや・・大人でも無理ですね。私なら無理です。何も出来ません。逆に子供の方がこういう時には勇敢なのかもしれない。笑

だから発端となる出来事はどうしようもなく、避けられない事と言いますか・・

辛い別れもあり、物語の悲しさと寂しさを感じますが、舞台の幻想的な世界は美しい!!読後は、心に哀愁残る作品でした。

小話(猫神さま)

小学生の頃の話なんですけど・・・

当時、私の住んでいた地域は新築のマンションや一軒家が立ち並ぶ地域と、古民家が密集している地域が、大きめの道路を挟んで左右に分かれていたんですよ。

古民家の並ぶ地域の一部は、家と家の間に人が一人通れるような隙間があり、いろんな道へと繋がっていて、まるで迷路のようでした。

その日、いつものように親友のエミちゃんと下校していたんですけど、「エミの家の近くにめっちゃ猫がおる秘密基地見つけた、教えたる!」と言ってきたんです。

彼女は古民家側の地域の住人で、何度か遊びに行ったことがありました。外壁に囲まれた大きくて立派なThe日本の家みたいな感じです。

秘密基地を目指し歩く彼女は、自宅の門を通り越し、少し行った所で、向かいに並ぶ家と家の間の細い道へ入って行った。道なりに何度か曲がり、通り抜けるとマンホール程度の小さな広場に出たんです。

その先は、緑がお生い茂り、薄暗くじめっとしていて、雨が降った後のような青い匂いと木の香りがしていたのを覚えています。

ちょっと怖くなった私は、「こんなところにほんまに猫おるん?」と聞くと、「おるよ、ついてきて。あの木の下やねん」と彼女が指差した先には一本のビワの木。

よく見ると、目の前に小さな獣道ができていて、エミは迷わず屈んでぐんぐん進んで行っちゃいました。めっちゃ怖かったんですけど、帰り道もわからなくなっていたので、仕方なく半泣きで着いて行ったんです。

虫もたくさんいてゾワゾワしながらエミの背中を追いかけていると、突然立ち上がったので、あっ着いたんだなと思いました。

木の下には、古びた木の丸椅子、上に黒い猫がちょこんと座ってました。その下にも黒い猫が2匹並んで座っていて、視線を上げると目の前に小さなお庭があったんです。

数匹の猫に囲まれたおばあさんが縁側に座って、じっとこちらを見ていた。じっと立ってる私達に、おばあさんは手招きし「いらっしゃい、こっちおいで」と言ったんです。

その優しい笑顔を今でも鮮明に覚えています。

猫達も優しくて、私たち子供相手でもじっとして触らせてくれてました 涙

それから私たちは毎日「猫神さまと猫達」に会いに行きました。

けれど悲しいことに・・長く続かず・・

猫の毛を毎日大量につけて帰っていた私は、母親に問い詰められ、2人の秘密”猫神さま”について話してしまったんです。

もちろん、ブチギレられました・・・危ない道を通る事、知らない人の家に行くこともダメ!それから、あの人は猫神さまではなく、猫を飼っている優しいおばあさんなんだよとしつこく説明されました。

どうやらエミも親に同じような事を言われたようで、それから私たちはあの場所へ行くことはありませんでした。それから月日が経って小学校6年生になった私たちは、こっそりと猫神さまへ会いに行くことにしました。

すると驚いたことに、前に通っていた細い道の先が壁になっていて、あの緑の広場に出ることができなかったんです。その時、やっぱりあの人は猫神さまで、会いに行かなくなった私たちに怒って道を塞いでしまったんだ。絶対にそうだと!と当時は思っていました。

数年前、気になって行ってみたのですが、猫屋敷はありませんでした。

真相はわかりませんが、元々あそこは空き地になっていて、持ち主が空き地ごと家を建て替えたのではないかと思います。

当時は小さかったので、生えっぱなしの雑草が自分達よりも背が高く、周りの建物も見えず、不思議な森のように見えたのかもしれません。

でも、あのワクワクドキドキした体験は今でもいい思い出です。

 

終わり

 

 

【自然 / 写真】雲海記録「野迫川村・高野辻休憩所」【自然を表す四字熟語】

訪問いただきありがとうございます。ひかるです。

今回は、今年8月に行った雲海のレポートです。

雲海といえば少し薄暗く幻想的な写真が撮れることが多いのですが、今回は鮮やかな写真が撮れました。

場  所 :  奈良県   野迫川村高野辻休憩所

 

深夜4時あたりから、車で山を上がり始めました。

まだまだ薄暗い道は、とても静かで不気味でしたが、どこか幻想的で和を感じる。

窓を開けると、新鮮な深い緑の香りがして、冷たいけど、心が洗い流されるような風が入ってくる。その、ひんやり刺す空気が心地いい。

※道は暗くて細く、結構くねくねしているので、安全運転、車酔い注意です。

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5時くらいに、到着した時の写真です。少し早すぎました。

まだ全体的に薄暗く、遠くの方で日が登り始めている感じでした。

この時は、ほとんど雲がありません。

 

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だんだんと空が青くなって、ゆっくりと雲が覆い始めたのと同時に、日が登り始めました。

 

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白い竜が山間を這って、こちらに向かってくるように見えませんか!?

とても幻想的な風景でした。

このスポットは虫がかなり多いので、服装やその他、虫除け対策してから行く事をおススメします。

 

思考を停止させる

私にとって自然の中で写真を撮ることは、自分を癒すことと同じです。

日頃生きている中で、息抜きせずに生活を続けていると、心が濁って重くなることがあります。

私の場合は、人と関わる中でストレスが生まれ、一人でいたとしても、自分という対象にストレスを感じてしまい自己嫌悪に陥ります。

理想と現実の差、他人と自分を比べて意気消沈、未来への謎の不安。

理由はわかりませんが、常に考えることをやめられなくなります。

そんな時、自然の中でぼーっとしていると、頭がリセットされて、心が軽くなります。

シャッターを押す度に、マイナスな思考や記憶が溶けていく感覚。

思考を停止させる、放棄する。すこしだけでも息抜きする時間や場所は、とても大切だと思います。

 

「山」「竜」「雲」が入った四字熟語

四字熟語の勉強にハマっているので、雲海のイメージと合ったものを5つご紹介します。

 

山紫水明 (さんしすいめい)

自然の景色が美しいこと。日の光で山は紫に見え、川は澄み切って見えることから、自然の美しさを表す。

 

竜飛鳳舞 (りゅうひほうぶ)

壮大である意味。竜が飛び、鳳凰が舞うように壮大であることから。また、筆勢・書体が生き生きとしている様子などを意味する。

神話に登場する竜と鳳凰は、縁起が良くてかっこいいですよね。「飛」「舞」も優雅でしなやかなイメージがあります。

 

雲蒸龍変 (うんじょうりゅうへん)

英雄が豪傑が現れ、活躍することの例え。

雲がわき、竜に変わって天に勢いよく駆け昇ると言う意から。

 

雲心月性 (うんしんげっせい)

名誉や利益にこだわらない、穏やかな気質の人。浮かぶ雲や、月のように清らかで澄んだ心、性質を持っていること。

 

風光明媚 (ふうこうめいび)

自然の景色が美しく、眺めが良いこと。

↑山、竜、雲入ってませんでした。すみません。

 

ー いつか、水墨画と習字にも挑戦してみたいです。