雨あがり艶やかな新緑を撮ることができました。
場 所 : 京都 【無量寿山光明寺 京都本院 瑠璃光院】
比叡山の麓に位置し、四季折々に移ろう美しい景観の中で誰もが”浄土の世界”に触れることができる瑠璃光院。 瑠璃光院HPより
数年前に一度、紅葉を見に訪れたことがあります。
通常は非公開で、春と秋の特別拝観期間のみ公開されているようです。
入館料は一人2,000円でした。同じチケットで隣の美術館にも入場することができました。
▽山門
瑠璃光院ってどんなとこ?
緑薫る静謐な空間で、心おだやかな時を過ごす。
瑠璃とは、極楽浄土を飾る七宝の一つである浄土の色。種々の楓が繁茂する深山の地に、幾重もの苔に覆われ清らかな泉が湧く。その主庭全体がまさに瑠璃色に輝かんとする様子から「瑠璃光院」という寺号がつけられた。
瑠璃光院 HPより
日本の美。陰翳の美。芸術ですね、うん。
静かで薄暗い空間は、目と耳を癒し精神を清め、目の前に広がる活力あふれた緑は心を明るく元気にしてくれます。
美しい青紅葉。朝まで降った雨のおかげで、葉がみずみずしく輝いて見えました。
寺院内は、どこを見渡しても美しい。
台や障子は陰に覆われて色を失くし、外に広がる緑は光に包まれ輝いている。
光の中から眺めるのも良いけれど、陰翳の中でしか味わえない美しさがあります。
ひんやりと澄んだ空気が、青々とした緑や苔の深い薫りをのせて、体に流れ込んできました。息を吐き出すと同時に、心の毒素が押し出されるようです。
連休前の平日だったからか人が少なく、静かで心安まる時を過ごすことができました。
私は緑色と黒色が好きなんです。モノトーンコーデに小物は緑が多いです。どうでもいい話をすみません 笑
また紅葉の季節に訪ねたいと思っています。
影の中で眠る
私の最も愛する風景は、視界に陰と光が共存している空間といいますか、境目です。
目を陰翳の中に置いて、奥に見える光をそっと眺めるのがいいんです。
疲れが溜まった週末は、日が落ちるまで部屋の明かりをつけません。しっかり日光が入る家なのでカーテンで遮り、ぼんやりと光が入る程度の薄暗さを楽しみます。
陰といえば、ひんやりと肌寒さを連想する人が多いと思いますが、私は芯から広がる深い温もりを思い浮かべます。もちろん実際は寒いんですけどね・・・。
どんな尖った形であっても、陰になると朧げで柔らかい印象を与えてくれます。
翳り始めたと思えば、また光に包まれるといった流れを感じるのも好きです。
これに関しては変わった感性だと自覚しています。
とはいっても、陰翳に浸かりすぎるのは健康に悪いので、泣く泣く控えめにしています。
陰翳礼賛
今回 撮影した日本の風景ついて考えてみました。
薄暗い和室に窓と緑といった素朴な風景が、どうしてこうも美しく見えるのだろうか。
実に感覚的なもので、なぜと問われると具体的に答えられません。
私は陰翳を利用して写真を撮ることが多いですが、日本の和を意識している訳ではありません。陰翳の中でこそ輝くものがあると考えているのと、単純に美しいと思っているからです。畳や縁側、襖、といえば現代の照明器具とはあまり結びつかず、自然光だけの薄暗さをイメージしてしまいますよね。
谷崎潤一郎の名随筆『陰翳礼賛』に答えがありました。
われわれは一概に光ものが嫌いと云う訳ではないが、浅く冴えたものよりも、沈んだ翳りのあるものを好む。それは天然の石であろうと、人工の器物であろうと、必ず時代のつやを連想させるような、濁りを帯びた光なのである。陰翳礼讃 P69
暗い部屋に住むことを余儀なくされたわれわれの先祖は、いつしか陰翳のうちに美を発見し、やがては美の目的に添うように陰翳を利用するに至った。
事実、日本座敷の美は全く陰翳の濃淡に依って生まれているので、それ以外に何もない。 陰翳礼讃 P115
われわれの座敷の美の要素は、この関節の鈍い光線に外ならない。われわれは、この力ない、わびしい、果敢ない光線が、しんみり落ち着いて座敷の壁へ沁み込むように、わざと調子の弱い色の砂壁を塗る。陰翳礼讃 P116
現代に生まれた日本の風景とはどのようなものなのだろうか。
この先、今私が生きている時代の風景はどれだけ残るのだろうか。
その時代に生まれた文化は時と共に薄れていき、時代を生きた人間は寂しく思うかもしれません。なぜなら実際に祖母がぼやいているからです。
今になっても人々は安らぎや美しさを求めて、遠い過去に作られた日本の風景にお金を払ってまで足を運んでいる。他国の影響を受けずにあった日本の風景に美しさを感じていることは確かですよね。
未来の私がどのような風景を見て寂しさを感じるのか楽しみであります。
今はまだわかりませんが、失って初めて気付く美が隠れているかもしれません。
陰翳の魅力については今すぐにでも味わえるものなので、外が明るいうちに
まあどう云う工合になるか、試しに電燈を消してみることだ。陰翳礼讃 P242
です。
他にも撮影したものがあるので、Instagramに投稿しようと思います!